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部活で育む、世界で活躍し貢献する力

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娘が通っている学校の記事。
こんな学校に通っているんだなぁ

2017年11月22日 05時20分配信の読売オンラインニュースの転載です。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校(渋渋、東京都渋谷区)には、文字通りの「グローバルな活躍」で名をはせる、二つの部活動がある。ひとつは、高校生英語ディベートのさまざまな大会で毎年、上位入賞し、世界大会に出場している強豪の「英語ディベート部」。もうひとつは、ニューヨークで開かれる高校生模擬国連国際大会への出場権を6年連続で獲得し、国内のリーダー的存在である「模擬国連部」。両部の活動を通じ、世界を見つめる生徒たちのまなざしに迫った。

相手の論を相手よりも理解して攻める

 今年7月から8月、高校生の英語ディベート世界大会、WSDC(World Schools Debating Championships)のアジア大会がタイ・バンコクで、続いて世界大会がインドネシア・バリで開かれた。日本からは、全国で選抜された5人が代表チームとして出場し、そのうち2人が渋渋・英語ディベート部の生徒だった。日本チームはリトアニアに勝利し、強豪のアメリカやニュージーランドとも接戦をみせた。
 その一人、鎌原舞衣さん(高2)は、貴重な体験をした大会をこう振り返る。
 「『NATOが東ヨーロッパに兵力を増強すべきか否か』『途上国の地域経済を守るため先進国の大手小売りチェーンの進出を制限すべきか否か』など、最近のニュースを読み込んでいないとわからない論題ばかりでした。まず賛否両方の意見を立論し、賛否のどちら側で戦うかが決まってから、もう一度見直す作業をします。相手の話をよく聞いて、相手よりも相手の立論を理解することが、ディベーターとして大事。そこからどう反駁して、どういう順で議論していくか。世界の強豪国と戦って、日本はまだまだだと思いました」
 同じく8月、アメリカ最大のディベート大会NFL(The National Forensic League)の予選が山梨学院大(甲府市)で行われ、同部の齋藤陸くん(高2)が出場した。中国、台湾、カナダの強豪チームが競うなか、姉妹校の渋谷教育学園幕張(渋幕、千葉市)の生徒とペアを組んで準優勝を勝ち取った。論題は、「ベーシックインカムを導入するか否か」。
 「僕はロジックを組み立てるのが得意で、相方は情報量がものすごい。この2人だからこそ、準優勝できました。僕たち英語ディベート部が目指しているのは、誰がジャッジしても、ディベートを知らない人でも票を入れたくなるようなディベート。分かりやすいディベートを、さらに目指していきたい」と齋藤くんは話す。2人は、来年6月アメリカで開かれる世界大会への切符を手にした。

「高校生には無理」と言われていたディベート

 顧問の北原隆志教諭が、授業に英語ディベートを取り入れたのは16年前。アメリカ人とディスカッションをする機会があったが、自分のロジックをうまく構成できなかった点を反省し、アメリカ人と対等に討論できる人材を育てなければと痛感したのがきっかけだ。その後、有志による放課後練習を始め、9年前に正式な部活動になった。
 「当時は、ディベートが英語力向上に効果的だと言われ始めたころ。ある大学教授に相談したら『高校生には無理』と言われましたが、そう言われると逆にやりたくなる性分ですので。ただ、日本の高校で主流のアカデミックディベートは、事前に論題が用意され、準備に半年くらいかける。これでは世界に対抗できないと思い、即興型のパーラメンタリーディベートを練習するクラブをつくりました」
 パーラメンタリーディベートでは、試合の15~20分前に論題(モーション)が発表され、肯定・否定それぞれ3人のチームで、どちらがジャッジを説得できるかを競う。スピーチ時間は1人4~7分、肯定か否定かは自分で選べず、ジャッジは個人的な考えを排除して客観的に判定する。もともと、イギリスの政治家のトレーニング用に作られたもので、高校生の世界大会ではこの即興型が主流だという。
 結成当初のメンバーは10人もいなかったが、今では部員50人を超す人気の部活となった。渋渋の働きかけで、英語ディベートに取り組む学校が増え、日本高校生パーラメンタリーディベート連盟(High School Parliamentary Debate Union of Japan)も発足、大会も多く開けるようになった。

英語ディベートが世界で活躍できる力を培う

 2016年には、第1回となるPDAWC(Parliamentary Debate Personnel Development Association World Congress)という高校生世界大会が埼玉県で開催され、渋渋のチームは、ディベートの本場・イギリスで1位のチームも破り、優勝を勝ち取った。「20年の夢がかなった瞬間でした」と北原教諭は感慨深げに話す。
 その勝因を、こう説明する。
 「ディベートは、論理的発信力、批判的・創造的思考力、そして、国際問題への意識が身に付きます。どのような論題が出るかわからないから、海外の新聞を読み込むなど、ニュースへの意識が高くなる。授業も真剣に聞くようになります。ディベートの土台になるのは知識だからです」。つまり、圧倒的な知識量が勝因だったというのだ。

スピーチや交渉を通して国際合意を得る

 一方の模擬国連部は、昨年11月に開かれた第10回全日本高校模擬国連大会で、全国135校202チームから勝ち抜き、優秀賞に輝いた。今年5月には、ニューヨークでの国際大会に日本代表として5年連続出場を果たした。ここでも、各国から集った強豪チームを破って優秀賞を獲得、確かな実力を証明した。
 11月にあった第11回の全日本大会では「エチオピア大使」役を務めたチームが優秀賞を獲得し、6年連続の国際大会進出を決めている。
 アメリカで始まった模擬国連は、日本では緒方貞子氏(元国連難民高等弁務官)によって大学や高校に広められた。2人1組のペアで、指定された国の大使役となり、担当する国の国益や政策などを考えたうえで、スピーチや交渉を繰り返し、決議案を採択する。1国の主張を押し通すのではなく、国際社会全体の合意が得られる決議案を作成し、国益と国際益のバランスを図る難しい競技だ。

帰国生ではないチームが優秀賞を獲得する快挙

 国際大会に出場した小牧薫子さん(高2)ら渋渋チームは、西アフリカの小国、カーボベルデの大使に指名され、死刑制度という難しい議題に挑んだ。小牧さんは、こう振り返る。
 「はじめは国名すら知らず、調べても資料が少なくて苦労しました。人権を守ることが国益となるのか、調べるほど分からなくなることもあり、納得できる政策を作るのは本当に難しかったです。他国の大使と交渉して話がかみあわなかったり、まわりの意見を聞かずに進める他国の大使に疑問を持ったりしたこともありました。でも、文化の違いを乗り越え、粘り強く交渉し、対立を解消しながら決議案を出すことができました」
 小牧さんらのペアは、海外在留経験のない一般生。帰国生ではないチームが優秀賞を獲得したことに、驚かされる。
 小牧さんに続けと、後輩たちも士気は高い。今夏は、初めて渋幕と合同合宿を行った。この合宿で中心的役割を果たした梶谷菜々美さん(高2)は、「夏の大会では、対立点が多いグループとの交渉で勘違いが生じ、議場全体で対立が深くなっていくように見えました。そこで、私はそのグループに一から丁寧に説明して、対立が解消するまで粘り強く交渉し、解決することができたのです」と話す。早くも、合宿の成果が表れたようだった。

魅力的な大使になるには人間力が試される

 模擬国連部の顧問を務める室崎摂教諭と菅家万里江教諭が、こう解説する。
 「模擬国連はディベートと違って、勝ちにいくのではありません。会議全体の流れを見て、必要ならば別のグループのフォロワーになることもある。時には強く出るべきこともあり、それには情報力やスピーチ力、演技力も必要です。いかに丁寧にコンセンサスを積み上げていくか。最後は人間力が試されます。自分を全部出して、魅力的な大使になれるかどうか。総合力の高い競技で、学生が培うべき力すべてが育まれます」
 模擬国連で育んだリーダーシップを、遺憾なく発揮しているのは、上野蘭晶さん(高2)だ。彼女らが中心になって、今夏は模擬国連の初心者向けに、教育模擬国連大会を開催し、全国から67校、約600人が集まった。
 「練習会議を重ねることで、優秀な1人が引っ張って会議を成り立たせるのではなく、リーダー役や交渉役など、一人ひとりの適性を生かした自分の果たす役割が見えてきます。それぞれがいろいろなものを持っていて、そのなかで自分は何ができるのか。正反対の立場の大使として交渉しなければならない場面でも、結局は、利害を超えた人と人とのコミュニケーションなのです」と上野さん。
 競技を始めた頃は分からないこともあったが、先輩のおかげで多くを学んだことから、「今度は、私が後輩に伝えていきたい」と意気込む。
 そうした上野さんの姿を目の当たりにし、室崎教諭は「成長しましたね。彼女は模擬国連で培った力を生かして、いろいろなことに挑戦を始めています」と目を細める。

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