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AI時代の教育論 葛西敬之氏

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「日経ビジネス 3月5日号 No.1931」に掲載されていた、リーダーたちがAI時代の教育論を語る「集中連載 AI時代の教育論 Vol.5 葛西敬之 JR東海 代表取締役名誉会長」において、葛西敬之氏は以下のとおり述べられています。

まったく同感です。
受験勉強だけでなく、多様な経験や仲間と過ごす時間がとても大事。
そのなかで、若いうちから決める癖をつけていかないと。
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 今は、子供の想像力や創造力を育むことが難しくなっているように感じます。家庭内ではテレビやゲームに細切れの時間が使われ、休日で時間がある時もテーマパークに行くという育ち方をすると、自分の興味をもとに自分で決めることが少なくなってしまいます。今は誰かが作り上げたレディーメードの空想で手軽に満足してしまい、想像力がなかなか育ちません。
 私にも孫がいて勉強を見る機会があるのですが、すべてが非常にシステマチックで細切れになっています。一口一口餌付けをするように子供に食べさせると、素直な子はそれを食べて、自然に力が付くという仕組みになっています。受験対策として非常によく分析、組み立てられていて、それに乗るのが最も効率的なのでしょう。ただそのやり方だと、自分で何かを求めるとか、自分で考えて勉強の仕方を工夫する必要がありません。
 例えば、英語を勉強する時に我々の時は、まとまった本を読みました。そこには起承転結のストーリーがあり、面白く感じます。ところが最近の教科書はワンパラグラフが長文解釈の教材になっており、それを様々な本から集めてきています。あれでは英語を読む面白さは身に付かない気がします。
 実体験の乏しい効率的な教育を受けてきた人は、エビデンス(証拠)に基づくアカウンタビリティ(説明責任)を重視する傾向があります。その通りにやって結果が悪くてもアカウンタビリティーさえ果たしていればいいという確かにエビデンスは重要ですが、それは過去における事実であり、それが明日、当たるかどうか分かりませんよね。エビデンスですべて説明できるのであれば、株で損をする人はいません。
 かつて明治維新や、日露戦争に勝つぐらいまでは自分の頭で考えたのではないでしょうか。しかし日露戦争に勝って以降の日本の教育というのは、大学の成績がいい学生が登用され、アカウンタビリティー主軸になって、自分で想像力や創造力を働かせることや直観力が失われてしまいました
 リーダーシップには創造力が必要です。人間の世の中ですから、他人の気持ちや様々な情報に対する繊細な感受性も不可欠でしょう。これはマニュアルで教われば分かるというものではなく、原体験みたいな人間関係があって、それで自然と身に付いていくものです。兄弟や友人の間との日常生活の中での原体験があり、それを小説や歴史、伝記を読んで膨らませていく。体験は自分の時間でしかありませんが、読書によって他人の時間も取り込むことができるのです。
 今はそうした時間がなくて、決まったレッスンごとにマスターしていきます。確かに知識は身に付くかもしれませんが、それが自分の行動に結びつくのでしょうか。IT(情報技術)の発達で情報は効率的に集められるようになっているので、ますます人間関係は希薄になっていますよね。
 例えば東京大学に入る学生は、激しい競争を乗り越えなければならないので、それなりの知識レベルを持ち、素質もいいと思います。ただし実社会と学生時代に住んでいる世界との間には大きな溝があります。学校は教えることが決まっていて、それをテストで試されて、よく勉強しておけばそれに答えられます。でも世の中に出てみると、課題そのものが分からない訳ですよね。
 実社会で活躍するためには、自分で物を見て、自分で判断する。自分で進路を決めて、その責任を自分で取るという生き方に切り替えなくてはいけません


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