「日経ビジネス 2月19日号 No.1929」に掲載されていた、リーダーたちがAI時代の教育論を語る「集中連載 AI時代の教育論 Vol.3小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長・経済同友会代表幹事」において、小林会長は、強靭な精神は絶望と遠回りが生み出すと書かれています。
小林氏は東京大学OBですが、今の東大生には辛口の評価です。
以下、記事のポイントの要旨です。
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誰も拾わないような火中の栗を拾ってこそ、経営者やリーダーの価値があると思っています。いろいろ理屈をつけて断るより、どんなに忙しくても仕事が来たらとりあえず受けてみます。逃げてはいけません。
世界は徹底した競争社会だという現実です。その中で、日本の若者が、戦い抜けるのでしょうか。最近は、おとなしい秀才が増え、挑戦するという機運が減退しているように感じます。その象徴が東京大学の出身者ではないでしょうか。
日本のぬるま湯の環境につかった東大の秀才の8割はリーダーになる資質がないと見ています。東大を出て大企業に就職しただけで満足しているようにしか見えない若者が多いですから。親から用意された塾などで効率よく勉強し、小手先でこまかしてきた秀才は、絶対にリーダーになれないでしょう。
これまでの教育では、記憶力があればいい大学に行けました。今はもうスマートフォンで何でも検索できるようになったので、記憶力だけでは通用しません。さらにAI(人工知能)が記憶力だけではなく、判断力すらも備え、人間の能力を代替する可能性が出てきました。
人間がAIにはない価値を生み出すためには、人間らしい経験を積むしかありません。人間らしい経験といえば挫折です。もっといえば絶望ではないでしょうか。AIは絶望できません。絶望からはい上がるプロセスにこそ、人間本来の強みが隠されているはずです。
何か大きな目標に向かって挑戦していれば、勝ち続けることは不可能で、必ず負けます。そこで徹底的に絶望する。ジャンルは問いません。大恋愛をすれば、大失恋をする。どん底からはい上がるハングリー精神こそ、AI時代には求められるのではないでしょうか。
かわいい子だからこそ崖から落とすという感覚が全くありません。失敗や遠回りするかもしれませんが、親や教師は子供にあまりべったりせず、子供への手出し口出しを我慢しなければなりません。
親に今必要なのは競争社会という現実に立ち向かい、必死に働くことではないでしょうか。その姿や雰囲気から子供は多くを学ぶと思います。親が懸命に働いていないのに、その子供は必死に学ぶのでしょうか。大人の必死な姿を見て、子供も一緒に頑張るのです。
まずは大人が目の前の課題に挑戦する。その姿が子供にとって最大の教育の題材になるでしょう。