神奈川県立横浜南高校・附属中の英語の授業は素晴らしいと思います。
中学受験に向けての学校研究をしているなかで、どんな英語を授業をやっているのか、その中身まで知ることはなかなかできません。
中学受験前の学校選びの時点では、その学校でどんな英語教育をしているかは気になるポイントだったのですが、実際のところ、なかなかわからないというのが正直なところでした。
それだけ、先生個人の裁量が多く、学校として英語教育の取り組み方針を横浜南高校のようき決めて進めているところはあまりないのかもしれません。
娘は学校の英語の授業があっているのだと思いますが、学校側は試行錯誤を続けているようで、学年によって英語の授業のやり方が変わっていたりもするようです。
文法や単語の学習に多くの時間を割くようにはならないで欲しいな、と思います。
神奈川県内の中高一貫教育校といえば、栄光学園、聖光学院、浅野学園の「私立御三家」が有名だろう。2018年春、大学への進学実績でこの3校に負けず劣らず注目された公立校がある。横浜市立南高校だ。12年に付属中学を併設し、中1から入学した「1期生」が大学受験に臨んだ結果、有力校への合格者数を大幅に増やしたのだ。生徒の潜在力を飛躍的に伸ばしたユニークな学習法について、三浦昌彦校長に聞いた。
■国公立大の合格者数が3倍以上に
18人から62人へ――。今春、同校の国公立大学の合格者数は1年前の3倍以上に増えた。17年はゼロだった東大、東工大へ5人ずつ入ったほか、横浜国大は1人から一気に18人に。早慶、上智など難関私立大も軒並み増加し、「以前とは別の学校かといわれたほど」と三浦氏は目を細める。
公立学校にも中高一貫教育校を増やすという文部科学省の方針のもと、神奈川県内ではまず県立の相模原、平塚の2つの中等教育学校が09年に開校した。横浜市立南は県内では3番目だったが、人口の多い横浜市内では初とあって保護者の関心は非常に高く、1期生の中学入試の倍率は10倍を超えた。
今春の合格実績が伸びた要因の一つは、難関をくぐり抜けてきた生徒の潜在能力がもともと高かったことが挙げられるだろう。だが、三浦氏は「それ以上に当校独自の6年間の学習カリキュラムの効果が大きい」と強調し、3つの特色を挙げる。
最も特徴的なのが、中学の英語の授業だ。名付けて「ラウンドシステム」。通常は1年間かけて教科書を始めから終わりまで順番に学習していくが、同校は2~3カ月で教科書を一通り学ぶというサイクルを1年生は5回、2~3年生は4回繰り返す。ただ単に同じことを繰り返すのではない。それぞれ異なるやり方で学ぶのがミソだ。
例えば1年生の場合、1回目はCDなどで教科書の英文を何度も聞き、ストーリーの概要をつかむ。2回目は英文を聞きながら文字を追い、音と文字を一致させる。3回目でようやく音読。4回目は英文の一部を空欄にしたワークシートを使い、当てはまる単語や熟語を考えながら音読。5回目は教科書の内容を自分の言葉で表現する。
「この方式の最大の効果は、生徒が英語をものすごく好きになること」と三浦氏。そもそも、この方式を導入した背景の一つは、中学1年では音と文字の一致でつまずく生徒が多いという問題意識だった。そこでまずは、たっぷり音を聞かせてから段階を踏んで表現させようという考え方だ。
では、中学3年間で実際に英語力は向上したのか。実は高校1年にあがった段階では、単語力や文法力の習得はやや遅れていたという。しかし、受験を意識した読み書き重視の授業に慣れてくると、吸収は早かった。会話力と理解力は身に付いているので、それがどんな文法に基づいているかを確認すればよかったからだ。高3のセンター試験では全学年(高校から入学した生徒を除く)の英語の平均点が200点満点中、自己採点で8割を超えたという。
「親しませる目的で始めた英語の授業が、結果的に受験用の学力向上にもつながった」というわけだ。さらに、英語力が向上したことで、他の科目の勉強にも時間が割けるようになった。これが進学実績の大幅な改善に結び付いたと分析する。
公立学校にも中高一貫教育校を増やすという文部科学省の方針のもと、神奈川県内ではまず県立の相模原、平塚の2つの中等教育学校が09年に開校した。横浜市立南は県内では3番目だったが、人口の多い横浜市内では初とあって保護者の関心は非常に高く、1期生の中学入試の倍率は10倍を超えた。
今春の合格実績が伸びた要因の一つは、難関をくぐり抜けてきた生徒の潜在能力がもともと高かったことが挙げられるだろう。だが、三浦氏は「それ以上に当校独自の6年間の学習カリキュラムの効果が大きい」と強調し、3つの特色を挙げる。
最も特徴的なのが、中学の英語の授業だ。名付けて「ラウンドシステム」。通常は1年間かけて教科書を始めから終わりまで順番に学習していくが、同校は2~3カ月で教科書を一通り学ぶというサイクルを1年生は5回、2~3年生は4回繰り返す。ただ単に同じことを繰り返すのではない。それぞれ異なるやり方で学ぶのがミソだ。
例えば1年生の場合、1回目はCDなどで教科書の英文を何度も聞き、ストーリーの概要をつかむ。2回目は英文を聞きながら文字を追い、音と文字を一致させる。3回目でようやく音読。4回目は英文の一部を空欄にしたワークシートを使い、当てはまる単語や熟語を考えながら音読。5回目は教科書の内容を自分の言葉で表現する。
「この方式の最大の効果は、生徒が英語をものすごく好きになること」と三浦氏。そもそも、この方式を導入した背景の一つは、中学1年では音と文字の一致でつまずく生徒が多いという問題意識だった。そこでまずは、たっぷり音を聞かせてから段階を踏んで表現させようという考え方だ。
では、中学3年間で実際に英語力は向上したのか。実は高校1年にあがった段階では、単語力や文法力の習得はやや遅れていたという。しかし、受験を意識した読み書き重視の授業に慣れてくると、吸収は早かった。会話力と理解力は身に付いているので、それがどんな文法に基づいているかを確認すればよかったからだ。高3のセンター試験では全学年(高校から入学した生徒を除く)の英語の平均点が200点満点中、自己採点で8割を超えたという。
「親しませる目的で始めた英語の授業が、結果的に受験用の学力向上にもつながった」というわけだ。さらに、英語力が向上したことで、他の科目の勉強にも時間が割けるようになった。これが進学実績の大幅な改善に結び付いたと分析する。
■数学は答えの1行目が書けるように指導
2つ目の特色は数学。もともと数学の教師だった三浦氏がいまの担当教師に口を酸っぱくして話しているのが「1行目が書ける生徒をつくってほしい」ということだ。どういうことか。
東大などの難関校の入試には証明問題が必ずと言っていいほど出る。教師はどうしても数をこなしたくなるため、どのように証明していくかの入り口を教えがちだ。しかし、「それでは数学が暗記科目になってしまい、考え抜く力が身に付かない」。だから1行目を自分で考えさせる授業をしてほしい、という意味だ。
20年度に始まる新しい大学入学共通テストでは、まさに暗記が通用しない考えさせる問題が中心になる。「入り口はたくさんある。最後に頂上にたどり着けばいい」。この考え方は数学だけでなく、他の授業でも根底に置いているという。
3つ目の特色は、こうした個々の科目を学習する土台となる知識欲を伸ばすことに力を入れる点だ。まず中学では「総合的な学習の時間」を活用。1~2年生では情報収集やディスカッションの方法を学んだうえで、グループでウェブページをつくったり、合唱コンクールで歌う歌詞をイメージした芸術作品をつくったりする。
3年生では海外研修旅行でカナダを訪問し、英語でプレゼンテーションするなどコミュニケーション力を高める。また、企業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)から専門家を招いて講座を開くほか、東京ガスの工場や動物園のバックヤードなどの職業体験も実施。「将来の夢や働く自分の姿を想像させ、では何を勉強すればよいかと逆算して考えさせる」
東大などの難関校の入試には証明問題が必ずと言っていいほど出る。教師はどうしても数をこなしたくなるため、どのように証明していくかの入り口を教えがちだ。しかし、「それでは数学が暗記科目になってしまい、考え抜く力が身に付かない」。だから1行目を自分で考えさせる授業をしてほしい、という意味だ。
20年度に始まる新しい大学入学共通テストでは、まさに暗記が通用しない考えさせる問題が中心になる。「入り口はたくさんある。最後に頂上にたどり着けばいい」。この考え方は数学だけでなく、他の授業でも根底に置いているという。
3つ目の特色は、こうした個々の科目を学習する土台となる知識欲を伸ばすことに力を入れる点だ。まず中学では「総合的な学習の時間」を活用。1~2年生では情報収集やディスカッションの方法を学んだうえで、グループでウェブページをつくったり、合唱コンクールで歌う歌詞をイメージした芸術作品をつくったりする。
3年生では海外研修旅行でカナダを訪問し、英語でプレゼンテーションするなどコミュニケーション力を高める。また、企業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)から専門家を招いて講座を開くほか、東京ガスの工場や動物園のバックヤードなどの職業体験も実施。「将来の夢や働く自分の姿を想像させ、では何を勉強すればよいかと逆算して考えさせる」
2つ目の特色は数学。もともと数学の教師だった三浦氏がいまの担当教師に口を酸っぱくして話しているのが「1行目が書ける生徒をつくってほしい」ということだ。どういうことか。
東大などの難関校の入試には証明問題が必ずと言っていいほど出る。教師はどうしても数をこなしたくなるため、どのように証明していくかの入り口を教えがちだ。しかし、「それでは数学が暗記科目になってしまい、考え抜く力が身に付かない」。だから1行目を自分で考えさせる授業をしてほしい、という意味だ。
20年度に始まる新しい大学入学共通テストでは、まさに暗記が通用しない考えさせる問題が中心になる。「入り口はたくさんある。最後に頂上にたどり着けばいい」。この考え方は数学だけでなく、他の授業でも根底に置いているという。
3つ目の特色は、こうした個々の科目を学習する土台となる知識欲を伸ばすことに力を入れる点だ。まず中学では「総合的な学習の時間」を活用。1~2年生では情報収集やディスカッションの方法を学んだうえで、グループでウェブページをつくったり、合唱コンクールで歌う歌詞をイメージした芸術作品をつくったりする。
3年生では海外研修旅行でカナダを訪問し、英語でプレゼンテーションするなどコミュニケーション力を高める。また、企業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)から専門家を招いて講座を開くほか、東京ガスの工場や動物園のバックヤードなどの職業体験も実施。「将来の夢や働く自分の姿を想像させ、では何を勉強すればよいかと逆算して考えさせる」
東大などの難関校の入試には証明問題が必ずと言っていいほど出る。教師はどうしても数をこなしたくなるため、どのように証明していくかの入り口を教えがちだ。しかし、「それでは数学が暗記科目になってしまい、考え抜く力が身に付かない」。だから1行目を自分で考えさせる授業をしてほしい、という意味だ。
20年度に始まる新しい大学入学共通テストでは、まさに暗記が通用しない考えさせる問題が中心になる。「入り口はたくさんある。最後に頂上にたどり着けばいい」。この考え方は数学だけでなく、他の授業でも根底に置いているという。
3つ目の特色は、こうした個々の科目を学習する土台となる知識欲を伸ばすことに力を入れる点だ。まず中学では「総合的な学習の時間」を活用。1~2年生では情報収集やディスカッションの方法を学んだうえで、グループでウェブページをつくったり、合唱コンクールで歌う歌詞をイメージした芸術作品をつくったりする。
3年生では海外研修旅行でカナダを訪問し、英語でプレゼンテーションするなどコミュニケーション力を高める。また、企業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)から専門家を招いて講座を開くほか、東京ガスの工場や動物園のバックヤードなどの職業体験も実施。「将来の夢や働く自分の姿を想像させ、では何を勉強すればよいかと逆算して考えさせる」
■難関校より本人が行きたい大学を優先
高校では、国のスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受けていることから、主に東南アジアの貧困問題や環境保全といった課題の解決策を研究させる。海外研修旅行はシンガポールを訪れ、日系企業などを訪問し、現地の実態も踏まえて最終的にリポートにまとめて発表する。志を持ったグローバル人材の育成が目標だ。
充実したカリキュラムにより、三浦氏ら教員が目指すのは「真の進学校をつくる」ことだ。難関校ばかりを受験させるのではなく、生徒が本当に行きたい「第1志望校」の合格に導くという意味を込めている。そのために、生徒が将来何を目指すのか、何を学ぶ必要があるか、一人ひとりに寄り添った指導を徹底する。
そんな教員の姿勢を示すエピソードがある。今春の卒業式は当初、3月1日を予定していたが、3年生の担任教員から「国公立の後期試験が終わった後に延ばしてほしい」との要望があり、16日に移したのだ。最後まであきらめず、志望校に挑む生徒を少しでも後押ししたい気持ちからだった。今後もこの日程を続ける予定だ。
中高一貫教育6年間の1クールが終わり、三浦氏が感じたのは「生徒が自分で自分の生き方を見つけることの大切さ」だという。厳しい受験競争を勝ち抜いた生徒の潜在能力は高い。半面、「親に言われるがまま、塾でおにぎり食べながら勉強してきて、自分では何も決められない子もいる」。6年間の学校生活で、自分で考える習慣を身に付けた生徒と、そうでない生徒では成長の度合いに大きく差がつくと話す。
この差を少しでも縮めるには、「教員のレベルアップと授業内容のさらなる充実が不可欠になる」。このため、来年度からは中3と高1の先生が相互に入れ替わって授業をする取り組みを始める予定。中学と高校の学習内容の違いを実際に体験することで、教える技術を高める目的だ。授業内容も、生徒同士が討論するだけでなく、教え合うことで定着率をより高めていく。
同校は新卒で初めて赴任する教員を多く受け入れている。「指導する力はベテランに劣るかもしれないが、新しいことにチャレンジする意欲は旺盛だ」と三浦氏は前向きに捉えている。子供たちとともに成長する教員のエネルギーが、公立校の新たな挑戦の原動力になっているようだ。
(村上憲一)
充実したカリキュラムにより、三浦氏ら教員が目指すのは「真の進学校をつくる」ことだ。難関校ばかりを受験させるのではなく、生徒が本当に行きたい「第1志望校」の合格に導くという意味を込めている。そのために、生徒が将来何を目指すのか、何を学ぶ必要があるか、一人ひとりに寄り添った指導を徹底する。
そんな教員の姿勢を示すエピソードがある。今春の卒業式は当初、3月1日を予定していたが、3年生の担任教員から「国公立の後期試験が終わった後に延ばしてほしい」との要望があり、16日に移したのだ。最後まであきらめず、志望校に挑む生徒を少しでも後押ししたい気持ちからだった。今後もこの日程を続ける予定だ。
中高一貫教育6年間の1クールが終わり、三浦氏が感じたのは「生徒が自分で自分の生き方を見つけることの大切さ」だという。厳しい受験競争を勝ち抜いた生徒の潜在能力は高い。半面、「親に言われるがまま、塾でおにぎり食べながら勉強してきて、自分では何も決められない子もいる」。6年間の学校生活で、自分で考える習慣を身に付けた生徒と、そうでない生徒では成長の度合いに大きく差がつくと話す。
この差を少しでも縮めるには、「教員のレベルアップと授業内容のさらなる充実が不可欠になる」。このため、来年度からは中3と高1の先生が相互に入れ替わって授業をする取り組みを始める予定。中学と高校の学習内容の違いを実際に体験することで、教える技術を高める目的だ。授業内容も、生徒同士が討論するだけでなく、教え合うことで定着率をより高めていく。
同校は新卒で初めて赴任する教員を多く受け入れている。「指導する力はベテランに劣るかもしれないが、新しいことにチャレンジする意欲は旺盛だ」と三浦氏は前向きに捉えている。子供たちとともに成長する教員のエネルギーが、公立校の新たな挑戦の原動力になっているようだ。
(村上憲一)
NIKKEI STYLE
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